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米航空業界に広がる「座席増、便数減」

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 米国の航空会社は比較的早いスピードで事業を拡大している。だが、必ずしも乗客サービスの向上にはつながっていない。

 その原因は、既存のジェット機に座席を追加したり機体を大型化したりして定員を増やす「アップゲージング(upgauging)」という航空業界の手法にある。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が運航計画のデータを分析したところ、この手法が採用された結果、航空会社が今月、国内線で提供する座席数は2年前より12%増えたものの、便数は4.4%減少した。

 これは旅行者にとってプラス面もあればマイナス面もある。大型機のほうが乗り心地はいいし、飛行速度も速い。頭上の荷物入れも広い。座席が増えれば格安な航空券を買える可能性は高くなるし、アップグレードも受けやすくなる。しかし、便数が減れば選択肢も減り、旅行者は不便を我慢せざるを得なくなる。小都市への便数が減る確率も高い。

 先週、司法省が米主要航空会社4社を談合の疑いで調査していることが明らかになり、各社の運航計画の策定方法に注目が集まっている。アメリカン航空グループ、ユナイテッド・コンチネンタル・ホールディングス、デルタ航空、サウスウエスト航空の主要4社には、利幅を守るために共謀して輸送能力の増加を抑制した疑いがもたれている。当局は約2カ月前に調査を開始し、4社に対して、2010年1月以降の月次輸送能力に関する詳細な文書や、輸送能力についての計画が話し合われたアナリストや投資家、他の航空会社との会合の報告書を提出するよう求めている。

 航空会社幹部はアップゲージングについて、賢く、リスクの少ない成長戦略だと説明している。単価――1座席1マイル当たりのコスト――を下げられるし、プレミアムシートやWiFi接続サービスなどを販売する機会も増える。空港の混雑も緩和され、嵐の際などの遅延やキャンセルを防止できる。

 なにより、航空会社は輸送量増強のために新たな機体を購入したりリースしたりする必要がない。デルタ航空の最高売上責任者(CRO)、グレン・ホーエンスタイン氏は最近のインタビューで「現在保有する航空機の効率化を進めている。(アップゲージングは)インフラは一切造らずにこれまでより多くの人を輸送できる」と話した。

 米航空業界団体エアラインズ・フォー・アメリカによると、平均的な国内便の座席数は現在107席で、5年前の95席から増加した。

 1機当たりの座席数が増えている理由の1つに、航空会社が多くの既存の航空機に座席を追加していることがある。アメリカン航空はボーイング737-800型機に10席を追加、定員を160人に増やした。ユナイテッドは定員138~144人のエアバスA320型機を150人乗りに変更した。

 同じ機体で座席数が増えれば、乗客の足元のスペースは狭くなるはずだ。だが、航空会社は、座席を薄くし、トレーテーブルやシートポケットのデザインを見直したこともあって、乗客にはほとんど分からないはずだという。航空会社は現有機と同じ機種で機体の大きい航空機の導入も始めている。サウスウエスト航空は現在、143人乗りのボーイング737-300型機と737-700型機を計575機保有しているが、さらに大きい175人乗りの737-800型機の購入を進め、現在は92機保有している。

 アップゲージングの最大の犠牲者は長年、拠点となるハブ空港と小都市の間の輸送を引き受けてきた50人乗りのリージョナルジェットだ。座席数の少ないリージョナルジェットはそもそも単価が高く、原油高が数年にわたって続いたことで単価はさらに上がった。米国の航空会社はこの5年間で定員が50人以下の国内便を約3分の1削減した。

 50人乗り小型機の代わりに比較的大型の航空機が導入され、それに見合うだけの需要がない小都市への便はなくなった。アメリカン航空の最高マーケティング責任者、アンドリュー・ノセラ氏は「小規模コミュニティーの需要がわれわれの変更についてくることを願っている。この問題はわれわれも承知している」と話した。

 アップゲージングの影響で、米国の多くの空港ではこの数年で運航本数が減少した。12年7月には、デルタ航空はミシシッピ州ジャクソンから50人乗り8便を含む1日11便を運航していた。しかし、デルタによると、今月の運航本数は1日8便で、そのほとんどがこれまでより大きなジェット機で運航される。座席数は8%増加した。ネブラスカ州オマハの空港エプリー・エアフィールドでは、発着する航空機の全体で座席数は9.4%増加したが発着数は6.7%減少した。

 カリフォルニア州モントレーでは以前、サンフランシスコ行きが毎日4便、27人乗りのターボプロップ機で運航されていた。空港の広報担当者ジェニファー・ヒッカーソン氏によると、ユナイテッドは今年3月、ターボプロップ機の代わりに50人乗りのジェット機を導入し、ただし毎日2便に減便した。

 ヒッカーソン氏は「(旅行者にとって)選択肢が減ったのは残念だが、皆が大きな飛行機で移動することを楽しんでいる」と語った。

By Susan Carey and Jack Nicas

By Susan Carey and Jack Nicas



引用:米航空業界に広がる「座席増、便数減」


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